ICUでの記憶 (その4)
こんにちは、心子です。
2017年3月の備忘録です。
大動脈弁閉鎖不全症になり「自己弁膜を使用した大動脈弁形成術」を受けました。
2017年3月6日の術後から3月10日までの3泊4日をICUで過ごしました。
ICUでの備忘録として最後にもう一つ、記憶を書き記しておきたいと思います。
相変わらず朦朧として、夢と現実との境目が分からなかった術後のICU、2017年3月7日か8日の時だったと思います。
無意識に時々つぶやいていたらしいのですが、この時もそんな状態のときでした。
人工呼吸器の気管挿管を抜いた後ということもあり、術後で力がでない上に声がかすれていました。
<愛犬との出会い、の思い出>
薄暗がりの草原のような場所、目の前を横切るように川が流れていました。
川の水面は月明かりに灯されたような静かな暗い流れ。
その川の向こう側に、1年半前に亡くなったはずの愛犬が尻尾を大きく振ってこちらを見ていました。愛犬はチョコレートラブラトールでしたから、薄闇と同じような色でしたが、艶々に光る毛並の中にいつものように瞳がキラキラして鼻が濡れて、反射して見えました。
「クリス、クリス。おいで。」
「こっちにおいで。」
「コイ、ツケ(愛犬を自分の左側に呼びおよせて座らせるコマンドです)。」
「クリス~~~」
(ああ、呼び寄せて抱きしめて、あの愛犬特有の土の匂いが混じった犬の匂いの中に顔をうずめたい。)
そんな切ない思いの中で叫んでいると(自分では大きな声で叫んだつもりでしたが、またいつもの独り言のようなつぶやきだったのでしょう)、看護師が声に気付いたようで近づいてきました。
「どうしました、○○さん。苦しいですか?どこか痛いですか?」
「”苦しい”じゃない、”クリス”です。」
「何ですか?それ?」
「犬の名前です。」
「そうですか、ワンちゃんもお家で○○さんの帰りを待ってますよ、きっと。」
「いえ、待ってません。クリスはもう死んじゃったから。」
「・・・・・。 ○○さん、今日から食事が始まります。ジュースかスープがでますよ。」
看護師さん、現実に引き戻す話題の切り替えがすごいです。
その後、私の朦朧とした世界にクリスが現れることはありませんでした。
「母ちゃん、心臓が動いているぢゃん!まだ、こちら側へ来てはダメだよ。」
「アタシは川のこちら側でみんなと楽しくやってるよ。」
「心配しないで、いつまでも待ってるからさー。」
あの時間は、
あちら側の世界からの、
クリスからの、メッセージだったのかもしれません。
2017年3月の備忘録です。
大動脈弁閉鎖不全症になり「自己弁膜を使用した大動脈弁形成術」を受けました。
2017年3月6日の術後から3月10日までの3泊4日をICUで過ごしました。
ICUでの備忘録として最後にもう一つ、記憶を書き記しておきたいと思います。
相変わらず朦朧として、夢と現実との境目が分からなかった術後のICU、2017年3月7日か8日の時だったと思います。
無意識に時々つぶやいていたらしいのですが、この時もそんな状態のときでした。
人工呼吸器の気管挿管を抜いた後ということもあり、術後で力がでない上に声がかすれていました。
<愛犬との出会い、の思い出>
薄暗がりの草原のような場所、目の前を横切るように川が流れていました。
川の水面は月明かりに灯されたような静かな暗い流れ。
その川の向こう側に、1年半前に亡くなったはずの愛犬が尻尾を大きく振ってこちらを見ていました。愛犬はチョコレートラブラトールでしたから、薄闇と同じような色でしたが、艶々に光る毛並の中にいつものように瞳がキラキラして鼻が濡れて、反射して見えました。
「クリス、クリス。おいで。」
「こっちにおいで。」
「コイ、ツケ(愛犬を自分の左側に呼びおよせて座らせるコマンドです)。」
「クリス~~~」
(ああ、呼び寄せて抱きしめて、あの愛犬特有の土の匂いが混じった犬の匂いの中に顔をうずめたい。)
そんな切ない思いの中で叫んでいると(自分では大きな声で叫んだつもりでしたが、またいつもの独り言のようなつぶやきだったのでしょう)、看護師が声に気付いたようで近づいてきました。
「どうしました、○○さん。苦しいですか?どこか痛いですか?」
「”苦しい”じゃない、”クリス”です。」
「何ですか?それ?」
「犬の名前です。」
「そうですか、ワンちゃんもお家で○○さんの帰りを待ってますよ、きっと。」
「いえ、待ってません。クリスはもう死んじゃったから。」
「・・・・・。 ○○さん、今日から食事が始まります。ジュースかスープがでますよ。」
看護師さん、現実に引き戻す話題の切り替えがすごいです。
その後、私の朦朧とした世界にクリスが現れることはありませんでした。
「母ちゃん、心臓が動いているぢゃん!まだ、こちら側へ来てはダメだよ。」
「アタシは川のこちら側でみんなと楽しくやってるよ。」
「心配しないで、いつまでも待ってるからさー。」
あの時間は、
あちら側の世界からの、
クリスからの、メッセージだったのかもしれません。
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